鼻をかんだ拍子やふとした瞬間にくり返し出血したり、ティッシュがすぐ真っ赤になるほど止まらなかったりする場合、体の内側に潜む異変が関係している場合があります。
鼻血のしくみ
鼻血は、鼻腔内の血管が破れて出血することです。鼻の入り口付近の「キーゼルバッハ部位」と呼ばれる部位は粘膜が薄く、血管も密集しているため、軽い刺激でも出血しやすくなっています。鼻は呼吸のたびに大きく動く器官のため、刺激を受けやすく、鼻血が長引きやすい理由の一つになっています。また、顔は心臓から近い位置にあり血圧が比較的高いため、一度開いた傷口からは勢いよく血液が押し出されます。粘膜は血小板を集める力が弱く血が止まりにくいです。そのため、一度出た鼻血は止まりにくいという点も特徴です。
一般的な鼻血の原因
鼻血の原因として多いのは指でほじる、くしゃみを連発する、強く鼻をかむなどの外的な刺激です。花粉症や風邪で粘膜が炎症を起こしているときはわずかな摩擦でも出血しやすくなります。また湿度が低い冬場やエアコンの効いた室内では粘膜が乾燥し、血管が弱まるため鼻血が起こりやすいです。さらにアルコールの摂取後や入浴後のように血行が良くなった状態では、血管内の圧が一時的に上昇し粘膜の傷口から出血しやすくなります。スポーツの後や標高が高い場所でも同様のメカニズムで鼻血が起きることがあります。まれに抗ヒスタミン薬や血液を固まりにくくする薬を飲んでいる場合、鼻粘膜が乾きやすくなり、出血しやすい状態になるケースもあります。
血圧が高い人は鼻血が出やすいって本当?
高血圧そのものが直接鼻血を引き起こすという明確な証拠はありませんが、血管の壁に常に強い圧がかかることで、細かな傷口が治りにくく出血しやすい状態であることは確かです。加えて動脈硬化が進むと血管の弾力が失われ、わずかな衝撃でも裂けやすくなるため、鼻血が出やすくなります。朝晩の血圧の変動が大きい人や血圧を下げる薬を服用している人は、鼻血が増えたと感じたら、内科で血圧を適切にコントロールできているか確認することが重要です。
慢性的なストレスや睡眠不足が続くと交感神経が活発になり血圧が上がりやすくなるため、生活習慣を見直すことも鼻血の予防の一環として大切です。塩分の制限や適度な運動、十分な水分補給は高血圧だけでなく鼻粘膜を健康な状態に保つことにも役立ちます。
こんな鼻血には注意が必要
大量出血が数十分続く、両方の鼻から同時に流れる、吐き気を伴うほど血がのどへ落ちる、あるいは血に黒い塊が混じるといった場合は、すぐに病院を受診する必要があります。鼻腔より奥にある動脈から出血していたり、重い病気を患っている可能性があるためです。特に高齢者で血液が固まるのを防ぐ薬を内服している場合、少量でも止血に時間がかかることで貧血を招く場合があります。そのため、自己判断で様子を見るのではなく、耳鼻咽喉科に相談することが大切です。つねに枕元にティッシュやタオルを置かないと不安なほど頻回に鼻血が起こるときは、鼻粘膜を焼灼して血管を閉じる治療などを行います。子どもでも同様の症状がみられる場合、先天的な血管の奇形が隠れていることもあるので注意が必要です。
鼻血が頻繁に出る病気「オスラー病」とは?
オスラー病は、別名「遺伝性出血性毛細血管拡張症」とも呼ばれ、毛細血管が拡張しやすく鼻や口腔、消化管などで出血を繰り返す稀な病気です。日本では2万人に1人程度と推計されますが、幼少期から鼻血が日常的に出るため本人も家族も慣れてしまい診断が遅れる例があります。オスラー病を患っている人は血管の壁が脆く弱いため、鼻血だけでなく慢性的な鉄欠乏性貧血や脳・肺動静脈瘻を合併することもあります。鼻血が頻繁に出るうえに貧血の症状が加わる場合は専門医による検査が必要です。治療方法としては、レーザーなどで鼻粘膜の血管を焼く方法などがあり、早めの診断でQOLを大きく改善できます。家族歴がある場合は遺伝カウンセリングを行うこともおすすめです。
応急処置のポイント
鼻血が出たら慌てずに上半身をやや前傾させ、出血側の小鼻を親指と人さし指でしっかり圧迫します。姿勢を前に倒すことで血液がのどへ流れ込みにくく、嘔吐反射を防げます。圧迫する時間の目安は5〜10分で、その間は口呼吸を意識すると楽です。冷たいタオルや保冷剤を鼻根部に当てると血管が収縮し止血効果があるのでおすすめです。塞ぎ込む綿やガーゼは圧迫を助ける目的であれば有効的ですが、奥に詰め込みすぎると粘膜を傷つけるため注意する必要があります。
冬場は室内の湿度を50〜60%に保ち、鼻腔を潤すための生理食塩水スプレーを常備しておくと再発予防に役立ちます。子どもが出血時にパニックを起こす場合は、お気に入りの音楽を聴かせるなど気をそらす工夫も効果的です。
鼻血の止め方の間違いと正解
頭を後ろへ反らす方法は鼻血の止め方として有名ですが、実際には正しくありません。後ろに倒すと血がのどに流れてしまい、飲み込んでしまうと、どのくらい出血しているかが分かりにくくなったり気分が悪くなる恐れがあるためです。また首筋をたたく、氷を口に含むなどといった方法も、科学的には認められていません。出血が落ち着いた後は二、三日は強く鼻をかむのを控え、寝る時には加湿器を使い粘膜の乾燥を防ぐと再発予防につながります。突然鼻血が出ると慌ててしまいがちですが、間違った鼻血の止め方を把握しておくことで、効果的な応急処置を行うことができます。
